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怨讐の扉 3
2013-11-13 Wed 15:41
フィクションであり、実在する法人、個人とは何等関係有りません。
 長身で痩せ型の奧埜幸多が何時ものように説教されている。都合が悪くなると頭を搔く癖があり既に数回繰り返している。国立滋津大出身の若手で俊才だが早合点が多い、おまけに口下手で要領が悪く連日上司から叱責される。事務手続きはマニュアル通りにするものだが、独自の手法で勝手に改定することがある。必然的にトラブルが発生し詭弁を並べるのだが、口下手なので上司に上手く伝達できず怒声を浴びることになる。
 図太い精神力の持ち主で他人から何を言われても気にしないタイプだが、周囲の女子からの醒めた扱いには顔を曇らせている。若い女子の多い部門なので恋愛の対象になる。唯我独尊のように蔑視されていても、意中の女子には好かれたいと思っていた。
「前にも言っただろ」
 林原が飽きれ気味に漏らした。社内では部付部長だが名刺は部長である。聞き慣れないポストは銀行の名残で多数存在する。事務システム部には5名いるが一癖も二癖もある者ばかりだ。
 謝るばかりで進展しない会話に疲れたので奧埜を席に戻した。
 林原は同命大出身で営業畑を歩んでいた。東京本社勤務時代に新宿駅構内で酔っ払いに絡まれ、格闘となり勢い余って線路に転落死させてしまう。正当防衛は認められたが各紙からゴシップされ大阪本社勤務となる。本来なら自主退職があってもいいのだが、当時の武川功児人事担当常務が慰留した。欲深い武川と金品の受け渡しがあったとの噂が社内では持ち上がったが真相は定かではない。
 その後黒縁の眼鏡を掛け、禁酒し連日終電まで残業した。休日もサービス出勤して励んだ入会自動審査システムの功績が評価され、関西地区同世代の出世頭になる。努力の賜であるが蔑視する者もいる。殺人者以下に扱われることに不満を抱く者は少なくない。
 楠田は林原の配下で、付かず離れずの距離感で接している。年嵩の部下になるので林原も接し難く、殆ど会話を交わすことがない。歴代の人事部長に献上品で籠絡したことは社内に広まっており、否定しようがない状況になっている。同世代以上からは冷淡に扱われ、同職位の他者との待遇とは大きく乖離していた。
「また、怒られたのか」
「ええ、まあ」
 楠田と奧埜の会話は何時もこんな内容である。すぐに頭を搔き言葉が続かない。俯き加減で自信喪失にも映るので、深追いすると虐めているように思われる。奧埜は口下手なので多くの会話を望まない。必然的に片言だけで終わってしまう。
 蒲生博寿副部長が林原と立ち話をしている。事務部門担当だがシステム部門と接点が大きく、毎朝クレームを報告する。蒲生はH系出向者で小言が多い。小太りで霜髪、手足が短めでモテるタイプではない。キャビネの配置が1cmずれても小言が出る。商業高卒で計算が滅法速く、銀行時代は営業、取引先中心の叩き上げである。些細な事で罵倒する峻烈さなので中年になれば出向するのは必然、指示したことの朝令暮改が多く社員達からは煙たがられている。質問や具申をすると、反抗的と受け止められ容赦なくパワハラを実践する。
「部長、頼みますよ。困っているんです」
「はい、そうですね」
 スタンドプレーが好きな蒲生は声高に騒ぐのが生き甲斐である。大袈裟に言っているが些細な出来事で下請け会社に直接云えばいいことであって、林原は聞き流す程度にしか受け止めていない。連日こんなやりとりをしていれば慣れてくる。真剣に聞くこともあれば聞き流すこともある。そうでなければ身体が持たない。
 今日も長い一日が始まる。林原は何時も通りの朝を迎えていた。
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