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怨讐の扉
2013-11-13 Wed 15:35
フィクションであり、実在する法人、個人とは何等関係有りません。
 安っぽい割烹店の『和椀』はふぐ料理を名物として営業している。これといって評判になるほどの店舗ではないが安さが売りである。偉い人の嗜好品なので幹事が宴会の予約をしたようだ。もう少し部員達の意見を聞いてもいいのではないか、と楠田利造は思ったが口外することはなかった。
 ふぐは好みが分かれる。皆が嗜好する食材ではない。特に鍋は若手女子が最も嫌うスタイルで、変な親父と一緒なら長時間席を外すこともある。
 幹事は大変気を遣う役目だが、トップの意向だけで進行すると興醒めする。宴会は出席者全員を満足させることが求められる。上司優先よりも別な手法はなかったのかと訝っていた。
 壮年で話好きな林原由一部長の諄い挨拶が終わり宴が始まった。人一倍メタボな磐田臣弐推進役の乾杯の号令で盛り上がりを見せている。座敷なのに起立させるのは銀行の風習である。大所帯になった組織を眺めながら、楠田は風貌に反して遠慮気味に着座した。
「是非、当社に来てください」そんな売り手市場の時代に入社した楠田は、女子社員から注がれたビール呑み干し昔を懐かしがっていた。小学校から野球で鍛えた体軀には物足りない酒量であるが、白髪の出る世代になれば体力も落ちる。幾人かに注がれて上機嫌になり、まだ序の口と思いつつも随分弱くなったと長嘆していた。
 阪東大学経済学部を卒業し、(株)白氷カードに入社したのは二十年以上も前のことだった。営業、経理、管理、審査、融資部門を経て、現在は事務システム部次長を務めている。
 出世レースでは平均的なポジションで特に目立つ存在ではなく、どちらかと云えば常に無難な道を選択するサラリーマンらしい生き方だった。早くに結婚し、一姫二太郎の子供達も働く年齢に達している。住宅ローンも僅かで、親の遺産も転がり込み生活に困ることはない。
 他社志望だったが内定が貰えず仕方なく入社したのだが、同期も皆同じような境遇で違和感もなく溶け込めた。多くの学生には滑り止め程度の存在であり、不本意で安月給だが業務内容は易いので転職する者は僅かだった。
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